「あなたへのおすすめ」が怖い
YouTubeでもAmazonでもTwitterでもInstagramでも表示される「あなたへのおすすめ」。
私が見たものの蓄積から判断して「あなた、これが好きならこれも好きでしょう」的な感じで表示してくれる。
小学生の頃妄想で「地球が半分に割れたら、こっち側は僕が好きな人、あっち側には嫌いな人が集まればいいのに」と思っていたが、それを別な手段で実現させている。
私はこの「あなたへのおすすめ」が怖い。
この感覚、分かる方がいるだろうか。
別に「画面を見られたら趣味嗜好がバレる」からという理由ではない。
この世には様々な人、様々なもの、様々な動画があるはずなのに私の画面に表示されるのは私が好きなものばかり。
本当ならそれは大変便利で幸せなことのはずなのに、嫌というか気持ち悪いというか、どう表現すればいいのか分からないが、何となく怖い。
インターネットというのは国境を超え、海を超え、様々な情報に簡単にアクセスできる。はずなのに、実際には「自分の趣味」という島が存在しており、それ以外の島に行くのは海を渡るのと同じように難しい。
「あなたへのおすすめ」で形成された「島」は非常に居心地が良い。
居心地が良すぎるが故に、違和感がある。
そのうち海岸線に知らず知らずのうちに高い壁が作られ、この島が「檻の中の楽園」となってしまうのではないか、という考えは、単に私がインターネットを使いこなせていないから発せられるのだろうか。
私はもっと「旅行」がしたい。
知らない土地を旅するように、考えたこともなかったような映画を観てみたいし、想像すらできなかった音楽を聴いてみたい。
私はまだ若いから少しは知的好奇心があるものの、人間は老いれば老いるほど知りたくなくなる生き物であり、それは私も避けられないであろう。
だからこそ私が老いる前に、心の関節がまだ動くうちに、と考えてしまう。
できるならば島々に別荘を、とも。
今はこの記事が「あなたへのおすすめ」に表示されないことを願うことばかりである。
筆者:齋藤アユム
筆者の音楽活動
Lemon Jam: